なぜかミスをしない人の思考法
中尾政之 著
人の失敗は「最高の教科書」になる。
気乗りしない報告ほど、重要度が高い。
失敗に「もっと真剣にやれ!」と精神高揚策をとっても長期的効果はない。
失敗は情報であり、知識であり、知恵である。
ナレッジマネジメントとして日々の仕事に応用しているうちに磨かれる。
新聞やテレビで知った事故・失敗に対して「自分だったらどうするか」を考える習慣が重要。
「報告・連絡・相談」は良い結果よりも悪い情報のほうが重要。
人のせいにしない人はミスが少ない。
「運が悪かった」と考える人はミスを繰り返す。
「失敗の3悪人」は“無知・無視・過信”
ミスには個人レベル、組織レベルなど、段階がある。
悪事は公開して誤ったほうが損失は小さい。
個人レベルの原因:
知識不足、伝承無視、理解不足、注意・用心不足、疲労・体調不良、連絡不足、手順無視、狭い視野、誤った理解、誤った認識、状況に対する誤判断、仮想演習不足、事前検討不足
組織レベルの原因:
権利構築の不良、組織構成の不良、戦略や企画の不良、異文化への理解不足・不適応、組織文化不良、安全意識不良、運営の硬直化、管理の不良、構成員の不良、環境調査の不良
個人・組織のどちらの責任にも出来ない原因:
使用環境の変化、経済環境の変化
誰の責任でもない原因:
未知の事象発生、異常事象の発生
致命的状況になりそうな事象を判断して、芽のうちに摘み取る。
「想定外」「予想外だ」というが、よく調べれば予兆があったはず。
予兆はきわめて小さいと心得よ。
失敗が「予兆」なしに突然偶発的に発生することはありえない。
氷山(大きなミス)は海面下に巨塊(小さなミス)が隠れている。
重大な事故:軽微な自己:ヒヤリハットの比率は「1:29:300」。これが仕事におけるミスの発生率。
正規のマニュアルを無視し「この方が分かりやすい」などの裏技を考え実行してしまう。
こういった“自分勝手な改善”が大きな事故につながる。
小さな問題の無視が“地雷原になる”と考える。
クレームやトラブルは、根本的な原因を解明し解決できていなければ、いずれまた同じようなトラブルが発生する。
声なきクレームに耳を傾ける。
一度起こした失敗を二度と起こさないための方策は、出来るだけ具体的にする。
原因解明はとことん追及しておかなければ、必ず同じ失敗はこる。
いつもと違うところにミスは起こる。
「その異常」に気付かない理由:
過信、無知、思い込み、改善の無視失敗に無意識
人手間を省かない。
現場の意見を上げやすくするため、ヒヤリハットカードの有効活用。
「危ない!」と思ったことは、必ず文書で記録に残す。
非常時に「人の上に立つ」器が試される。
逃げも隠れもうそもない姿勢を示す。
ジョンソン・エンド・ジョンソンの順番(全ての子会社での憲法):
1消費者、2社員、3社会、4株主
松下電器の石油暖房機:
ボーナス商戦の中、ホームページ、テレビ、ラジオ、新聞を使ってリコールと危険の周知を行い、コストよりも信用を優先させた。
企業イメージはどのような行動をとるかできまる。
根拠なく「様子を見よう」などとしない。
そうしている間に悪化する。
根拠のない期待は徹底的に排除する。
人任せをやめればミスは激減する。
シャープが小型電卓を発売、カシオが価格破壊の電卓を発売した中、高額で大きな電卓を開発販売した松下電器、松下幸之助氏「もうこれは売れない。無理して売ってもお客様に迷惑だ。捨てよう。捨てられないならわしが買う。」重役社員が認められなかった失敗をトップが認める「負け」は、失敗の継続を止めた。
スポンサーリンク
ミスを将来の財産にする。
現場とデータで分析する。
初夏に急激に売れる冷やし中華が梅雨時以降に売れ伸びない理由の分析:
気温の問題というのが通説だったが、更に調査したところ、味に飽きていたことが判明。
バリエーションを加えて売上げ上昇。
イチかバチかのギャンブルにはのらない。
「まさか」の事態まで備える。
大量注文の罠。世界進出が始まったばかりの日本人営業マンに起きた悲劇。
ソニー盛田昭夫氏は違った。中東バイヤーのトランジスタラジオ10万個の見積を求められるが、それを算出するには新工場の建設が必要。
しかし、もし工場建築後にキャンセルとなった場合には損失が出る。
それを考慮し、5000個から1万個の見積までは通常生産範囲のためディスカウントされているが、それ以上はリスクを加味し、価格を吊り上げた。
中東バイヤーは10万個で安く注文を入れ、最初はその内の5000個だけ納品を頼み、残りはキャンセルするというやり口だった。
結果、相手は1万個の注文をして商談成立。
「うまい話」には裏がある。
ミスをしてもただでは起きない意識
ジャングル大帝のレオは、暗がりで書いたためにたまたま色が白くなってしまったライオンの子どもだった。
締切が迫る中、手塚氏は書き直すことはせず「これはいける!」と思い、作品にした。
このようなことを「セレンディピティ」というが、このような偶然はいつも私たちの周囲にある。
それに気づくのが「天才」なのかもしれない。
製品作成に失敗をしても必ず再検証を行う。
他の使い道で活躍するかもしれない。
本田宗一郎:
「わが社に最も損害を与えた社員に対して社長賞を与える」これは、向こう傷は問わないということであり、「成功のために真剣にやって出た損益は責めない。それを教訓に成功してもらいたい。今日の大失敗は明日の大成功。恥じることはない。」というもの。
減点主義ではなく加点主義を貫いた。
社員をトカゲの尻尾にする会社に人はついていかない。
ミスの起こらない仕組みを作る。
ある計算間違いの多い子どもに「確実に解きなさい」「あわてず丁寧にとくように」と叱った。
これは対処療法。
しかし、答案を分析すると、間違いは桁数が多くなるにつれて発生している。
九九はあっているのに桁がずれてしまっている。
「筆算の桁をまっすぐきれいに書きなさい」と注意するのが根本治療。
失敗には根本治療と呼ぶべき失敗予防法を見つけなければならない。
「やる気があるのか」「まじめにやれ」などの精神論ではミスは減らないことを認識する。
成功事例を追いかけると危険なこともある。
「柳の下のどじょう」とばかりに成功事例を追いかけることがあるが、失敗するケースが意外に多い。
類似商品はどこまでいっても類似商品。
「ウォークマン」の類似品は多数発売されたが、若者が欲しかったのはステレオカセットプレイヤーではなく「ウォークマン」が欲しかったのだ。
「いいひと」と「お人よし」はトラブルメーカー。
国際ビジネスでは「いい人」は「どうでもいい人」を意味し、「お人よし」とは「無知」を示す。
海外企業との取引では、「知りませんでした」ではすまないことを肝に銘じておく。
ミスから生まれたヒット商品
ポストイット、曲面印刷技術「キュービックプリンティング」、αGELをグリップに使ったボールペン
松下幸之助氏は「失敗したら自分が悪い。成功したら運が良かった。」
当事者意識と使命感が、失敗をリカバリーする最強のモチベーションである。