ANAのおせっかい文化

どんな問題も「チーム」で解決する ANAの口ぐせ

ANAビジネスソリューション 著

ANAグループには、3万人の社員たち一人ひとりが、日々何気なく使う言葉、すなわち「口ぐせ」がある。

たとえば「あれっ、大丈夫?」「自分以外は、みなお客様」などがそうだ。

これらの口ぐせの根底には、私たち「TEAM ANA」に脈々と受け継がれる「おせっかい文化」がある。

「おせっかい」という言葉はマイナスの意味で使われることが多い。

だが、私たちはこの言葉をポジティブな意味で捉えている。

相手に「もう一歩」踏み込み「もうひと言」を加えるだけで、相手との関係は劇的に深まる。

それを一人ひとりが実践すれば「チーム」でコミュニケーションを活発にとり合う風土ができあがる。

先が見えず、経済状況が刻々と変わる現在「チーム戦」は大切だ。

なぜなら、昨日役立った能力、仕事のしかたが、今日もうまくいくとは限らないからだ。

みんなの知恵を集めて成果を出す「チーム戦」でないと、生き残れない時代が来ているのだ。

職場では「こうしたほうが効率的なんじゃないかな」などと気づくことがある。

こうしたとき「まあいいか」と黙っておくのと、相手や担当者に「言っておいたほうがいい」と伝えるのと2通りある。

ANAの社員には、この「まあ、いいか」の発想がない。

どんな小さなことでも、気づいたことを「放置」せず、できるだけ「その瞬間」に伝える。

気づいたことがあれば、すぐに伝える。

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自分自身のことだけに注意を払うのでなく、仕事をいっしょにする仲間のことにも注意を払い、気づいたことがあれば口に出して言う。

そうすることで、運航の安全性やお客様へのサービスの質をより高めることができる。

チーム全体としての力を高めることができるのだ。

それらが、結果的に個人の成果にもつながるのだ。

ANAでは、会話にプラスすることで、お客様にやわらかく伝わる表現、「マジックフレーズ」を使う。

例えば「恐れ入りますが」「お手数をおかけいたしますが」などだ。

ANAでは、このマジックフレーズを仲間同士でも使う。

たとえば、話しかける際には「○○さん、いま話をしてもいいですか」

「お忙しいところ申し訳ありません」などだ。

こうしたひと言を添えるだけで、気持ちのよいコミュニケーションがとれる。

また仲間同士でも伝えづらいことは「○○してください」ではなく「○○したほうがもっとよくなるよ」と言い方を変える。

フライト中「すぐに」「その場で」直してもらわなければならないことは「今すぐ、こうしてください」と命令や指示をする。

通常の企業なら、これで終わりだ。

ANAでは、このようなやりとりがあった後、指示をした側が、相手、すなわち指示を受けた側に歩み寄り「どうしてそうしたの?」「あなたはどう思う?」と行動の「理由」を確認している。

追い詰めるような言い方をすれば「怒られた。非難された」という印象しか残らず、指摘した内容を受け入れてもらえない。

だから、相手を尊重しながら伝えるのだ。

ANAの「おせっかい文化」は、お客様に対しても実行される。

お客様が何を望んでいるかを現場でリサーチするのはCAの仕事の一つだ。

フライト中はお客様の要望を聞き出せる格好の機会だ。

「本当は伝えたいことがあるが、言い出すまでもない」というお客様がいる。

そうしたお客様の心の内を見極めるために、私たちは、「観察する」「想像力を働かせる」「尋ねてみる」の3つを行う。

たとえば、首まで毛布を掛けて休んでいるお客様がいるとして「寒いのかな」と想像し、「もう一枚毛布をお持ちしましょうか」と尋ねてみる。

「お願いします」と返答があれば「温かいお飲物をお待ちできますよ」「お体の具合はいかがですか」と、もう一歩踏み込んで、お客様の希望を聞くことができるのだ。